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ゆっくりしていってね [その他7]

『日本人のための第一次世界大戦史 世界はなぜ戦争に突入したのか』(板谷敏彦 著 毎日新聞出版 2017)

 ををこりゃ隊長が激賞していただけある。内容はタイトル通り。ただこの作者が歴史学者じゃなくて証券会社、ウォール街からヘッジファンドもやってたという元実業家の作家なんですな。歴史学者の書いた第一次世界大戦の本はけっこう読みましたが、どれもいまいちよく分かったような分からなかったようなでしたが、こんどのは歴史学者が書いたのじゃないので、科学技術、国際情勢から世界経済まで全部解説してある。

●ちょうど技術が発達しまくっていた時期。ただし当時はブロック経済どころか経済が全部グローバルに繋がっており、1カ国で新兵器を独占することがなかった。むしろ開発した方が各国の軍に売り込まなきゃ成らない始末だった。
●電信、蒸気機関、スクリュー、銃の大量生産などもこのころ
●ちょうどアフリカもアジアも植民地の分割が終了したところで、「紛争が起こったときに適当に領土を分割して納める」と言う事が出来なくなっちゃった。特にバルカン半島を分割した後は、ほんとに新しい土地が無くなった
●普通選挙と国民皆兵によって外交にも庶民の意見が反映されるようになって戦争の危険が増した。一部軍人が予算獲得のために新聞を使って国民に対外危機を煽るという手法を使うようになった。貴族や政治家だけで外交をやっていたときには、損切りして妥協することが出来たが、大衆が意見するようになって妥協出来なくなった。だいたいヨーロッパの王室なんてみな親戚ですからな。
日露戦争が第0次世界大戦ってのも言われてみればそうだね。単にロシアに局地戦で勝っただけじゃなく、ロシアがドイツから金借りたことも後に影響、陸戦海戦とももちろん各国の軍備に影響を与えた。
●バルカン半島はもともと面倒くさいところだったが、オスマントルコが押さえつけていたのを開放したらさらに面倒くさくなった。サラエボ事件はきっかけに過ぎない
●徴兵制が敷かれた結果、当時の軍隊は、国民から喝采を浴びるサッカーのナショナルチームみたいな立ち位置だった。警察が政府の犬で、軍が大衆の側に立つ(と大衆が思っていた)
●税金を納め、国防に参加する、その代わりに政治にも口を出すという市民社会の当たり前の意識(これが日本人には欠落しているね)
●オーストリア軍はクソ
●塹壕前は怖い
●アメリカの生産力ありすぎ。アメリカだけで結局話が済んじゃうじゃん
●他にもいろいろあるが書き切れない

 まあともかく、世界情勢の全てが密接に絡みついていて、これ一つが原因!!と言えないことは分かった。歴史学者が本を描くと、自分の専門分野一つについてしか書かないのでなかなか見通せないのよね。
 ただ、新聞が戦争を煽って、愚衆が戦争を希求するってのが、第二次大戦まえの日本だけじゃなく、そのまえの一次大戦前のヨーロッパでもそうだったってのは、目からうろこだった。

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